2022.10.25
いけばな界では、草木を物体や形として扱わず、命あるもの、あるいは命の象徴として扱います。少しでも長持ちするように、鋏を入れる時も不自然な姿にならぬように、本当に大切に扱います。
そんな思いが高じるのでしょうか。いけばな界の人は、花や枝葉を人扱いすることがままあります。たとえば、手直しの折に「この人の顔がもっとよく見えるように…」と言いながら花がよく見えるように動かしたり「この人は横に広がろうとしてはるから、斜めにいけましょか」と枝を整えたりされるので、初めて聞いた時は少し驚きます。
習い始めた頃は「飴ちゃん」とか「お芋さん」みたいな感じかなとも思っていたのですが、それとはちょっと違う。そもそも、関西の人に限った現象でもありません。
そんな私もたまにですが教える機会があります。ふと気が付けば「この人、上を向いてもらいましょか」「この人、横の方からごめんやす~って感じでのぞかせて…」などとつい口走っていました。 そこで合点がいったのですが、擬人化した方が言わんとすることがよく伝わる気がするのです。知らず知らずのうちに草木の命がつくりだす「表情」をきちんと見る大切さが身に染みているのかもしれません。
暮しの花手帖
2020年10月から2022年3月まで京都新聞発行「Iru・miru(イルミル)」に掲載されたコラム「京都暮らしの花手帖」(書き手:池坊総務所 京極加代子)の内容を掲載しています。