暮らしの花手帖 第13回「展覧会の花」
2022.11.26
春と秋は花材が豊富になるため、いけばな界は花展(いけばな展)のハイシーズンを迎えます。いけばなと聞くと敷居を高く感じてしまう方も多いようですが、明治の頃はちょっと違ったようです。
「祭の夜など特に、町の一角の小さな屋台の前にたくさんの人々が押し寄せ、黙ったまま、ひたすら感心して通り過ぎてゆく光景を目にすることがある。(中略)小さな花展が行われているのだ。」『日本の面影』角川ソフィア文庫 ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)著
この随筆からは、いけばなが日常的な興味の対象となっていて、誰もがそれを観賞する素養を持っている様子がうかがえます。さらには花をいける日常があり、その延長に街角の花展があるという構図も見えてきます。
こうした花展の延長にあるのが流派をあげた大きな花展です。華道家元の最大規模の花展は、江戸時代から恒例となっている「旧七夕会池坊全国華道展」です。例年十一月中旬(今年は11月10日~15日)に開催され、宮中行事の七夕の花会に由来する花展です…と聞くと、それこそ敷居が高く感じるかもしれませんが、一輪挿の花をきれいだと思う心の延長にあるものです。
暮らしの花手帖
2020年10月から2022年3月まで京都新聞発行「Iru・miru(イルミル)」に掲載されたコラム「京都暮らしの花手帖」(書き手:池坊総務所 京極加代子)の内容を掲載しています。