暮らしの花手帖 第14回「金の盃・銀の台」
2022.12.21
花が少なくなる冬シーズン。中でも草の花はごく限られてきます。そうしたなか、水仙は寒い時期に青々とした葉を伸ばし、花を咲かせる数少ない存在として、いけばな界では古くから珍重されてきました。
すっとした端正な姿に上品な香りを漂わせることから「凛とした姿に馥郁たる香り」というのが水仙の伝統的なキャッチコピーです。いけばな界では、稽古の合間合間に水仙をかざかぎ、うっとりと一息いれるのが、この時期の「いけばなあるある」ではないかとにらんでいます。
また、水仙の白い花びらと中央の黄色い副花冠は、金盞銀臺(金の盃が銀の台に載っている)と見立て、冬を代表する祝儀の花として扱いました。銀の台に載った金の盃…想像するだけでも神々しいような美しさです。そんな見立てができる古人の心の豊かさに敬服し、あこがれもします。
そろそろ年の瀬を迎え、新年の準備も気になりだす頃となりました。来たるお正月には水仙をいけて金銭銀臺を思い描きつつ「馥郁たる香」に一年の幸いを願うのも素敵です。
暮らしの花手帖
2020年10月から2022年3月まで京都新聞発行「Iru・miru(イルミル)」に掲載されたコラム「京都暮らしの花手帖」(書き手:池坊総務所 京極加代子)の内容を掲載しています。