2023.03.31
華道。その他にも茶道・香道・書道など「道」と名の付く習い事はいろいろあります。この「道」は、もちろんてくてく歩く道でなく、大きく二つの意味があります。一つは「やり方・方法」もう一つは「生き方・精神」。言い換えるなら、技と心です。
華道家元の秘伝書には、技と同じくらい心がけや精神性が説かれていることから、技だけが大切なのではないことがうかがえます。
ここからは推測ですが、それぞれの道を究めた方からは芯の通った豊かな人間性が感じられるため、どの道の世界も技の習得だけでなく、人間性も磨かれるとみています。
さらに推測を重ねると、それぞれ道は違えど道の先にあるものは実は同じなのではないか、と。道の先には、技を磨いた自分への誇り(鼻持ちならない自尊心ではなく)とか、他を思いやる心とか、清々しい生き方だとか…そうしたものをひっくるめた「失うことのない幸せ」があるように思えるのです。
どの道を歩くかは人それぞれですが、私は花の道を選び、たくさんの道しるべに導かれてきました。この先も私の推測が正しいか否かを確かめるべく精進したいと思います。
連載は今回でおしまいとなりますが、少しでも花の道をお伝えできていたなら、無上の喜びです。
暮らしの花手帖
2020年10月から2022年3月まで京都新聞発行「Iru・miru(イルミル)」に掲載されたコラム「京都暮らしの花手帖」(書き手:池坊総務所 京極加代子)の内容を掲載しています。