暮らしの花手帖 第3回 「ロクヨンの思い」
2022.01.07
池坊の6:4。この「ロクヨン」は陰陽思想でいうところの陰と陽の割合を意味し、池坊が花に託す思いを表しています。
あらゆる物事は陰と陽に分類でき、その調和によって命が生まれるという陰陽思想は、池坊のいけばな理論にも影響を与えました。伝統的ないけ方では、枝葉の裏を陰・表を陽として陰陽を調和させることで、命ある草木の姿を表します。ただし、奇数でいけるため、正面から見て陰の枝を一本多くいけるのが約束で、それが6:4といわれるゆえんです。
調和させて…というなら5:5ではという気もしますが、6:4とする理由は、アンバランスが足りないものを補う原動力を生み出す、というのが解釈の一つとしてあります。
また、同じアンバランスなら陽が強い方が縁起が良いと思われるかもしれません。しかしながら陰を強く見せるのは、陰が満ち切ってこの先は陽へ向かうばかりという前向きな姿勢を表しているからです。
一陽来復という言葉がありますが、これは陰が極まって陽へ転じることを意味するそうです。冬至が過ぎ、年も改まった今、陽の季節へと舵は切られました。世の中が明るい方へ向かい続ける一年になることを心から祈ります。
暮らしの花手帖
2020年10月から京都新聞発行「Iru・miru(イルミル)」に掲載されているコラム「京都暮らしの花手帖」(ライター:池坊総務所 京極加代子)の内容を掲載しています。