2022.06.15
花鋏は、最も大切ないけばなの道具です。大きさは、鋏を握って手から刃が出る程のものを選ぶのですが、女性なら五寸から五寸五分、男性なら六寸から六寸五分ほどが平均でしょうか。池坊では蕨手(わらびて)と呼ばれる形の鋏を使います。鋏の色は、花鋏は黒打と白打(銀色)があり、好みで選びます。
鋏は自分の一番の相方となるので、購入する時は実際に握って手にしっくりなじむかどうかを確認することが大切です。そうして実際に鋏を使っていると、自分の癖が鋏に現れてきます。黒打だと、握る部分は地金の色が現れ、さらに手に馴染んできます。
さて、問題です。鋏を持ちあわせていない時、長い花材の持ち運びに困っていたとします。「切ってあげよう」とある人が言いました。それに対して「いえいえ、お借りできれば私が切りますので」というこの返答は正解でしょうか?
実は不正解です。鋏はそれぞれの大切な相棒ですから、他人に使われることを嫌う人は多いものです。正直なところ、一度や二度他人が使ったからといって、大きく何かが変わることはないのかもしれませんが、これと決めた相方を他人の手に渡さないのが、鋏への礼儀であり、プライドです。
暮しの花手帖
2020年10月から2022年3月まで京都新聞発行「Iru・miru(イルミル)」に掲載されたコラム「京都暮らしの花手帖」(書き手:池坊総務所 京極加代子)の内容を掲載しています。