暮らしの花手帖 第9回「夏の救世主」
2022.07.15
夏に花をいけるのはなかなか大変です。暑さゆえしぼみやすく、かといって空調があっても風が当たりすぎると乾燥が進み傷んでしまいます。
そんな夏のいけばなの救世主はヒオウギ。厚みのある丈夫な葉が檜(ひ)扇(おうぎ)のように広がり、橙色や黄色の小さな花を咲かせます。ヒオウギの花自体は一日花ですが、毎日次々に咲き替わり、葉や茎はしっかりしていて酷暑にも長持ちするありがたい花です。
ヒオウギは祇園祭にいける花としても知られており、祭の期間中、鉾町の町家では、屏風とともにヒオウギのいけばなが飾られているのをよく目にします。
祇園祭、実は池坊とは浅からぬ縁があります。
華道家元が住職を務める六角堂では、江戸時代の終わり頃まで祇園祭の山鉾巡行の順番を決めるくじ取り式が行われていたことはあまり知られていません。また、太子山には、聖徳太子を開祖とする六角堂縁起の一場面が意匠となっているなど、意外なご縁があります。
脳内でお囃子や巡行を再現しつつ、夏の救世主、ヒオウギをいけるとしましょう。
暮しの花手帖
2020年10月から2022年3月まで京都新聞発行「Iru・miru(イルミル)」に掲載されたコラム「京都暮らしの花手帖」(書き手:池坊総務所 京極加代子)の内容を掲載しています。