2021.12.13
生け花を習っている生徒さんへのインタビューです。お稽古を始めたきっかけや実際のお稽古の様子などをご紹介します。
第3回は花屋さんとしてフラワーアレンジメントのお仕事をしている寺田さんです。既にお花の仕事をしていたにもかかわらず、なぜ、生け花を始められたのでしょう…。
お稽古を始めたきっかけは?
寺田さんは幼い頃から花屋さんの仕事に憧れがあり、ヨーロッパのフラワーアレンジメントを目指し、フラワーデザイナーとして資格を取得し花屋を開業。以来、ブライダルを中心に20年間、フラワーアレンジメントの仕事をされてきました。
「時折、仕事先で「何流ですか?」と尋ねられることがあり、そのたびに「いけばなは勉強していません」と返事をする自分に疑問を持ちはじめ、和も洋も両方知るべきでは?と思ったことから池坊の教室に通うことに」ときっかけを話してくださいました。
「これまでずっとヨーロピアンブーケをやってきて、沢山あるいけばなの流派の中でも池坊が一番かけ離れた存在」だったそう。「ブーケを手掛け始めた当初は洋風なものが良いと思っていたので、池坊には全く興味を持ちませんでしたね。それがいつしか年を重ね、和も良いよねと思うようになり、それならと日本の伝統で生け花の王道といえる池坊を選ぶことにしました」
生け花を習ってみて
花屋として20年。日々花に触れているからコツを掴めば簡単にできるのでは?と思っていた寺田さん。ですが「実際にはとてもとても、、、」と、その難しさを語られます。
「生け花は奥が深く、予想をはるかに超えた難しさと驚きがあり、歴史の深さを知れば知るほど、理想の生け花を生けられるようになるにはまだまだと思う日々です。でも知れば知るほど面白いです!」と。生け花の一筋縄ではいかないところが逆にモチベーションになっているようです。
仕事への効果
池坊を始めたことで、お仕事で手掛けられる花の生け方に、これまでにない変化が出たそうです。
「ヨーロピアンブーケは、”空間”がないことはないですが、どちらかといえば空間の取り方は狭くて、キュッと詰めたような形が多いです。反対に池坊は空気感を大事にする・間を通すみたいな感覚があって、そこはヨーロピアンブーケと全く違うので、花をいけるスペース全体の空間の取り方や、花と花の距離感をものすごく考えるようになりました」
ヨーロピアンブーケの代表例は、いわゆる婚礼のブーケ。「ブーケにせよ、高砂の卓上の花にせよ、華々しくお花がいっぱいてんこ盛りが良しと思っていたのが、生け花を通じて僅かな花材で空間を使って活かすという方法があるということがわかりました」
また「ヨーロピアンブーケでは、枯れた花材は使わないのが当然だったけれども、生け花では枯れた花材にも風情を感じ、秋の季節感を醸し出したりであるとか、枯れていく様から季節の移ろいを捉えたりであるとか様々な考え方があって、私にとって新しい出会いで表現の幅を広げるきっかけに」なったそう。
「一般的なヨーロピアンブーケはダイナミックさや華やかさをまとっているけれど、私の作風はそこから離れ、侘び寂びを感じさせるものだと思う」とのこと。
「侘び寂びというと茶室を想起させて、ブライダルの雰囲気にはあまり向いていないと思われると思いますが、最近では少子化やコロナの影響でブライダルも少人数でという流れがあって、家族だけの食事会をというケースも増えてきました。そんな場だったら華やかな花がワーッと沢山あるよりも、ささやかな雰囲気に合わせた風情のあるものの方がマッチするので、そういう意味でも学んだことが非常に仕事に活かされています」と話します。
先生はどんな方ですか?
先生は「とっても面白い先生で、ちょっと型破りな方」だそう。お稽古の時は花の生け方はもちろん、その花とその形に生ける意味など細かく教えてくださり、また、お稽古が終わった後の雑談も楽しく、寺田さんはそれに癒されているそうです。
「お稽古を始める前は、怖い先生だったらどうしようと不安を抱いていましたが、いざ始めてみると楽しい先生で、不安は一掃。とっても親しみやすい先生だったので、肩肘張らず力むことなく、すーっと自然な流れでここまでやってこれました」
今後の目標は?
寺田さんはいつか生け花を教える立場に立ちたいと考えておられるとのこと。「今はまだまだその位置には遠いので、そこに向けて一生懸命お稽古を頑張る」というのが当面の目標だそう。話の端々から新しいビジョンを思い描かれている様子がうかがえました。
取材におうかがいした教室はコチラ
金山から近くて交通の便も良いので、仕事帰りにお稽古される方も多い教室です。明るく楽しい雰囲気でお稽古をしています。
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